木造住宅の【基礎】について解説します(前編)

木造住宅の基礎を解説 前編

代表の鈴木です。

今回は木造住宅の【基礎】について前編後編とに分けてこのブログで解説していきたいと思います。
2022.10.06改稿

木造住宅の基礎について

「家の基礎は大事だぞ!」と聞いたことがあるでしょう!
なぜ大事なのでしょうか?

おそらく
「基礎の上に建物が載っているから!」
「建物を支えているから!」
というイメージがあるからだと思います。

確かに基礎は建物において重要な責務を担っています。
しかしながら例えば木造住宅の場合、建物の構造の話となると柱や梁や金物、あるいは耐力壁など基礎からの上の話ばかりです。鉄骨造にしても同様です。
基礎に関しては、せいぜい「ベタ基礎だから丈夫!」くらいの話しか聞いたことがない方が多いのではないでしょうか?

基礎は鉄筋コンクリート造

建物が木造であれ鉄骨造やRC造であれ、基礎は全て鉄筋コンクリートで作られています。なぜならそれは法律で決まっているからです。

基礎(鉄筋コンクリート造)は主にコンクリートと鉄筋という二つの素材でできておりますが、鉄筋コンクリート造における【コンクリート】の役割は圧縮力に対する抵抗であり、【鉄筋】の役割は引張力に対する抵抗であると言えます。
双方の利点が合わさることで、地震などの様々な方向からの外圧力に対して非常に強い構造体になると言えるのです。

木造住宅の基礎の力の抵抗を説明するための画像

布基礎とベタ基礎について

基礎の種類は大きく分けて「布(ぬの)基礎」「ベタ基礎」の2種類に集約されます。

木造住宅の基礎、布基礎とベタ基礎のイメージ画像

一般の方や住宅業界の従事者であっても単純に「ベタ基礎」の方が強いと認識している方が多いですがそれは間違いです。
確かに床全面にコンクリートが敷かれている「ベタ基礎」の方が使われているコンクリートのボリュームがあって何だか強そうに感じます。
しかしながら結論から言うと、「布基礎だから・・・、ベタ基礎だから・・・どちらが強い!?」という議論は無意味で、「布基礎が良いのか?、ベタ基礎が良いのか?」は、その基礎に載る構造体や地盤強度によって変わるというのが正しい答えです。

難しい話は省略しますが、一般的に耐圧盤(スラブ)を持っている「ベタ基礎」の方が軟弱地盤に適しているのは事実です。それは基礎そのものが強いからではなく、ベタ基礎の形状がより安定感があるからです。
ただし軟弱地盤では必ず基礎補強が施工されますので、やはりベタ基礎が有利であるとも言い切れません。
布基礎とベタ基礎のメリット、デメリットを正しく理解していないと、トンチンカンな説明になってしまいます。
よく木造系ハウスメーカーの若手営業マンが自信満々で語る「うちはベタ基礎だから強いですよ!、あちらの会社さんは布基礎だから危ないです!」という説明は全くマトが外れているのです。

木造はベタ基礎、鉄骨造は布基礎

現在、木造は「ベタ基礎」が採用され鉄骨造は「布基礎」が採用されるケースが多いのが現状と言えます。
30年ほど前までは木造も布基礎が一般的でしたが、以降地盤調査が必然の流れとなり軟弱地盤への対応が重要視されたことでベタ基礎に注目が集まり、木造でもベタ基礎を採用するメーカーや工務店が増えてきました。
また、木造の構造躯体も耐震性向上に伴い、柱中心の考えから【耐力壁=面】の考えが浸透したことで、広く面で力を受け止めて地面に力を伝えていくベタ基礎の考え方が木造には合っていたのでしょう。
今では逆に木造で布基礎の現場を見かけることはほとんどないと言っても過言ではありません。

鉄骨造はなぜ布基礎を採用するのか

それでは鉄骨造は何故いまだに布基礎が主流なのでしょうか?
鉄骨造は今も昔も柱と梁で建物の構造を形成する「ラーメン構造」です。
地震や台風
などによって建物にかかる外圧は、柱や梁を介して最終的には柱の足元(柱脚)に集まります。その力が基礎に流れますので柱の位置に集中して基礎に力が加わるのです。
そして柱に集中した力を受け止めるためには布基礎の方が都合が良いのです。
その理由についてご説明いたします。

基礎の立上がりは梁という考え方

前に解説しましたが、基礎は鉄筋コンクリート造であり基礎の立上がりと根入れのベースまでの部分が「梁」とみなされます。(以下、図参照)
基礎の立上がりは布基礎もベタ基礎もGL+400mmで計画されることが多いですが、根入れの深さ(寸法)を比べると建築基準法通りの解釈では「布基礎は240mm」「ベタ基礎は120mm」となっており布基礎の方が120mm梁成(高さ)が大きいことになります。
梁成が大きい方が梁としての強度が強いため、鉄骨造のように基礎に集中的に力がかかる構造の場合は布基礎の方が向いているのです。

基礎の梁成の考え方を説明する画像

外圧を柱で受け止め基礎に伝える工法は【布基礎】を採用し、外圧を「壁=面」で受け止めて基礎に伝える工法は【ベタ基礎】を採用しているケースが多いと理解していただければ良いかと思います。

木造住宅の基礎計画について思うこと

日本全国で建てられている木造住宅の8割以上は構造計算をしなくても建築許可が下りる建物です。よって、多くの住宅会社は費用と時間とコストがかかる構造計算は実施していません。基礎にいたっては、断面形状について、だいたい決まった図面を使いまわしています。その多くは「ベタ基礎」です。
ちょっとここで疑問に感じて欲しいことがあります!
たとえ構造計算をしない建物でも、基礎の上に乗る構造体については、建築基準法で3つの簡易な計算と8つの仕様ルールで安全性を確認することが義務付けられています。なので当然建物の形状や重さ、間取りによって構造計画が変わります。
しかし基礎については、簡易計算の対象から外れているだけでなく、8つの仕様ルールの中で、基礎のサイズと鉄筋の太さや配筋ピッチの最低基準が決まっているだけです。
だからどの建物でも基礎の断面形状は同じものが使い回されるのです。
「家の基礎は大事!」なのに、簡易計算すらしないなんて・・・
ここに疑問を感じるべきだと思うのです。

建築基準法レベルは安全なのか!?

【建築基準法の第一章 総則】にはこう書かれています。

この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進資することを目的とする

簡単に言えば、【建築基準法は最低限の基準ですよ!】ということです。
「建築基準法に準じた建物です!」とは、「あなたの家は法律で定める最低限レベルの基準で建てましたよ!」と言われているのと同じです。
でも一般の方、お施主様は、営業マンから「建築基準法を遵守した建物です!」と言われれば安心してしまうのでしょう。

【建築基準法20条】にはこう書かれています。

「建築物は自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧および水圧並びに地震その他の振動及び衝撃に対して安全な構造のものとして・・・」

まさに構造計算の内容をうたっています。
しかしながら【建築基準法20条1項4号建築物】では、構造計算で安全性を確認しなくても建物が建ってしまいます。
これを【四号特例】よび、木造2階建まで(平屋を含む)で、延べ床面積が500㎡以下の建物が該当します。
どうでしょう、日本のほとんどの住宅がこの規模に当てはまります。
簡単に言うと、「2階建までの木造建築物は構造計算しなくていいよ!、設計するときに建築士がチェックしておいてね!」
と言うことです。

建築基準法レベルと構造計算(許容応力度計算)の比較

ここで建築基準法の最低限レベルの簡易計算と構造計算(許容応力度計算)がどれだけ違うか比べてみましょう。

建築基準法:3つの簡易計算
1・壁量の確保(壁量計算)
2・壁配置のバランス(四分割法)
3・柱頭・柱脚(柱の上下端部)の接合方法(N値計算法)
構造計算(許容応力度計算)
まず計算にかかる前に建物ごとに重さを調べます。
・ 建物の重さを調べる【建物の自重】
・ 建物の床に乗る重さ(人や家財道具)を想定する【積載荷重】
・ 雪が積もった時の屋根にかかる重さを考慮する【積雪荷重】
・ グランドピアノや大型金庫や水槽など特に重い物の重さを考慮する【特殊荷重】
・ 全部の重さ合計する。【建物自重+積載・積雪荷重+特殊荷重】

重さを把握してからいよいよ計算に入ります。

【許容応力度計算(ルート1)】
まず建物にかかる重さが力としてどう伝わり、その力に耐えられるかを調べる
1・建物にどのような重さ(下向きの力)が伝わるか調べる。
2・伝わった重さに材料(柱や梁)が耐えられるか調べる
3・地震が来たときにかかる力を建物の重さから換算する。
4・台風がきたときにかかる力を調べる。
5・地震や台風が来たときに建物にかかる力(横向きの力)に材料(柱や梁)が耐えられるかを調べる。
【許容応力度計算(ルート2)】
許容応力度計算(ルート1)の結果に基づき次の計算を行う。
1・地震が来たときに、建物がどのくらい傾くのか計算する。
2・台風が来たときに、建物がどのくらい傾くのか計算する。
3・建物の上下階の強度のバランスを調べる。
4・建物の重さと強度が偏ってないかを確認する。

通常ここまでが「構造計算」とよばれております。

いかがでしょうか?

「あなたは、建築基準法レベルで計画された建物と、構造計算(許容応力度計算)された建物では、どちらの建物に住みたいですか?」

また、家を建てるときに、建設会社から構造計算を「する or しない」の選択を与えられたことがありますか?

最低限の建築基準法をクリアしたレベルの建物を改めて構造計算してみると、ほぼNG判定がでるという調査結果もあります。それほど構造の安全性に関しては、建築基準法レベルは脆弱であると認識すべきだと思います。

まとめ

構造計算は時間もお金もかかり、建設会社に短期的なメリットはありません。
しかしながら私が知る限り、お客様のために本気で家づくりをする住宅会社は、必ず構造計算を実施して建物の安全性を確認しています。

木造住宅の【基礎】の話から、構造計算の話が大半になってしまいましたが、「住宅の基礎を考える上で、構造計算が欠かせない、構造計算をすべきである」というお話でした!

構造計算については次のブログでも詳しく解説しています。
木造住宅も構造計算って!?【日本一わかりやすい木造の構造計算の解説】

次回、木造住宅の【基礎】について解説します(後編)では基礎工事の工程の中で注目すべきポイントを解説していきます。

それではまた。

2019.06.17
2022.10.06改稿

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