2025.07.02改稿
代表の鈴木です。
今日は【新築住宅の保証について】のお話です。
一般的に物を購入するとき、あるいはサービスを購入するときは「保証」について関心を持つはずです。
まして家という高額な買い物は特に気になりますよね!
そこで、新築戸建て注文住宅の場合という条件で保証について少し整理していきたいと思います。
私は大手ハウスメーカーに12年在籍しておりました。その後他の建設会社に5年在籍、そしてアーキ・モーダを立上げて16年目になります。だからこそ話せる内容がありますので最後まで読んでいただけると幸いです。

新築住宅の保証 | 法律で義務化された保証とは
2000年04月に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」通称「品確法」に基づいて、すべての住宅施工会社に「瑕疵担保責任」が義務付けられました。
そして20年後の2020年4月1日施行された民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと改まりましたが、新築住宅においては品確法の特則が適用され、大手、中小問わず住宅を供給する全ての会社は「主要構造部の欠陥」及び「雨漏れ」について【10年保証】することが義務づけられております。
新築住宅の保証 | もし施工会社が倒産してしまったら!?
法律で義務化された【10年間の瑕疵担保責任】も、施工したハウスメーカーや工務店が健全に存在していることが前提の保証です。(当たり前ですね!)
ところが、ハウスメーカーや工務店が建ててから10年以内に万が一廃業、あるいは倒産してしまったらどんなに立派な保証書が存在していても、それらはただの紙切れになってしまいます。
それでは困ってしまいますよね!
そこで、2009年10月以降に引き渡される住宅には瑕疵担保責任を履行するために、施工会社に対して「資金確保」が義務付けられます。
資金確保の手段は、法務局などに「保証金を供託するパターン」と「保険加入によるパターン」がありますが、供託のパターンは大手ハウスメーカーが選択しており、その他ほとんどの中小施工会社は保険に加入しています。
その保険が「瑕疵担保責任保険」と呼ばれるもので、新築の住宅を引き渡す施工会社は、供託或いは物件ごとに瑕疵担保責任保険に加入しなければ引き渡しをすることができない仕組みとなっております。
それでは新築住宅を建てた会社が倒産、廃業した場合に、保証金の供託や瑕疵担保責任保険がどのように機能するかをご説明させていただきます。
「保証金の供託(大手ハウスメーカー)」の場合
最初に申し上げると非常に面倒な手続きが必要となります。以下、国土交通省のHPに記載されている内容を記します。
「供託金の支払い(還付)を受けるためには、新築住宅の購入者等は、まず、国土交通大臣に対して、損害賠償請求権の額を確認するための申請を行う必要があります。次に、国土交通大臣が交付した技術的確認書(債務名義又は公正証書等がある場合)か確認書(それ以外の場合)を添付の上、供託所に対して供託物払渡請求書(供託規則24条1項)を提出する必要があります。」
どういうことかわかりますか?
法務局に補償金の供託をしている多くのハウスメーカーが倒産、廃業した後に建物に瑕疵が発見された場合、その被害額を所有者が示さなければならないということです。もちろん一般の方が被害額の算定などできませんので、おそらくどこかの調査会社を探して依頼しなければなりません。
そして国土交通省に手続きを行い、供託所(法務局)に被害額を請求する必要があり、その金額で瑕疵に対する補修工事の支払いに当てる流れになります。
どうですか?非常に面倒な気がしませんか?
「瑕疵担保責任保険」の場合
瑕疵担保責任保険に加入している中小工務店が倒産、廃業した後に建物に瑕疵が発見された場合、建物の所有者は手元のある「保険証券」記載の瑕疵担保責任保険法人に連絡を入れます。
保険法人は調査員を派遣し建物の瑕疵部分の確認、他の施工業者の手配を行います。
そして瑕疵に対する補修工事が終わったらその施工会社に保険法人の保険金の中から支払いが行われます。
いかがですが?保険金を供託しているケースよりもずっと楽だと思いませんか?
ではなぜ大手ハウスメーカーは瑕疵担保責任保険を使わずに保証金の供託を行うのでしょうか。
それは1棟1棟保険料を支払うよりも、まとまった額の保証金を供託した方が安く済むからです。
年間数千棟規模のハウスメーカーならばそう考えるのも妥当でしょう。
新築住宅の保証 | 長期保証制度の本当の意味を知っておこう!
ハウスメーカーを中心に、20年保証や30年保証、そして60年保証など長期保証制度を謳う会社が増えてきました。
お客様にとって、保証期間は長ければ長いほど安心ですね!
さて、その長期保証制度の内容を見てみましょう。
まず、保証対象項目はどの会社も「主要構造部と雨もり」が中心です。
最近は屋根や外壁も対象項目に含んでいるケースも見られます。
この長期保証制度は、瑕疵担保責任の10年間が経過する時点で、有償又は無償の点検を受け、必要なメンテナンスをそこの施工会社で実施(有償)することを条件に、プラス5年或いは10年の保証が継続されていきます。
安心ですね!!!?
新築住宅の保証 | ハウスメーカーに都合がいい長期保証制度
なぜ大手ハウスメーカーを中心に長期保証制度を謳う会社が増えているのでしょうか?
少子化に伴い、新築住宅の着工棟数は年々減り続け、2006年の129万戸を境に2023年は約82万戸と1/3も減少しています。そこでハウスメーカーは新たな収入源として、長期保証制度を謳った顧客の生涯囲い込みを狙ったのです。
まず定期的に「点検費用」と「必要なメンテナンス工事」が自動的に受注できます。
途中他社でメンテナンスやリフォームしてしまうと、途端にこの長期保証は打ち切られてしまうという不安感を煽ることで、長期保証を盾にハウスメーカーは将来にわたってメンテナンス工事やリフォーム工事を自社で受注し続けることができるのです。
建物を長期間使用していくためには、メンテナンスが必要なことは多くの住まい手の方は理解していますが、長期保証制度を使っているとメンテナンス工事や将来のリフォーム工事時はお客様が自由に施工会社を選ぶことができません。
それは言い換えれば、ずっと同じ会社(窓口)で面倒を見てもらえるというメリットかもしれませんが、一番のネックはメンテナンス工事やリフォーム工事の価格が非常に高いことに尽きます。
価格交渉も効かず、言い値で発注せざるを得ません。
弊社も毎年のように大手ハウスメーカーで建て入居後10年以上経ったという物件の「リフォームやメンテナンス工事をしてほしい!」というの依頼を受けます。みなさん口々に仰るのは、「大手ハウスメーカーの見積もりが高すぎる!」「保証が切れても構わない」ということです。
新築住宅の保証|それでも工務店の保証が心配な方へ
それでも大手ハウスメーカーの長期保証に魅力を感じ、工務店の保証が心配な方へお伝えいたします。
中小工務店が加入している「瑕疵担保責任保険」ですが、基本的に10年でその役目を終えます。
しかしながら「延長保証サービス」を使って保証期間を延長することが可能です。瑕疵担保責任保険法人の一つである「株式会社 住宅あんしん保証」を例に解説いたします。
・延長保証内容は変わらず「構造耐力上主要な部分」「雨水の侵入を防止する部分」
・10年経過した時点で、住宅あんしん保証による検査を実施し一定の基準に適合することが確認できた場合は、最長5年間延長保証を付与する。
(建物の状態が良好であればメンテナンス工事を行うことなく、保険料と検査費用で合計7万円弱(2025年現在)で5年間の延長保証が可能です。)
また所定の防水メンテナンス工事(外壁・屋根・バルコニー・雨掛かりの木部、外部シール工事)を行うことで、10年間の延長保証が可能で、10年ごとに繰り返すことでさらに延長保証を継続することができます。
いかがでしょうか。大手ハウスメーカーの長期保証制度とほとんど変わらないことがご理解いただけると思います。
新築住宅の保証 | お客様がほとんど知らないこと
保証には必ず「免責事項」があります。
建物の保証で免責事項って何だと思いますか?
改めて確認すると結構あるのですが、重要のことは【自然災害に起因する建物の損壊は保証対象外になっている】ことです。
地震や暴風雨、積雪など必ず起こりうる自然災害については免責扱いで建主の自己責任なんです。
知っていましたか!?
新築住宅の保証 | 保証よりも大切なこと
「何かあっても、大手だから大丈夫!」「保証がついているから大丈夫!」
多くの方がそのように思っています。
確かに間違っていませんが、イザという時に使えない物(保証)という覚悟や認識も必要です。
大きな地震が来た時、モンスター級の台風が来た時に建物を支えるのは、家族の安全を守るのは、「保証」ではありません。
それは【許容応力度計算】をして耐震等級3を確保した建物であり、デザインと雨仕舞を両立させた高耐久仕様の建物であったりします。
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日本一わかりやすい構造計算の解説
長期保証制度はお客様以上に施工会社にとって、とても都合が良い内容になっているように思えます。
本当の理想は、「保証」を使わずに済むことですよね。
これがお客様にとっても施工会社にとっても一番いい状態なのではないでしょうか?
この状態に向けて一番理想的な方法は、先にもあげた【許容応力度計算】をして耐震等級3を確保した建物であり、デザインと雨仕舞を両立させた高耐久仕様の設計なのだと思うところです。
それではまた。
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