【気密施工の重要性と気密シート】について詳しく解説

2024.04.05
代表の鈴木です。

本日は「気密施工の重要性」と気密施工の要、「気密シート」について解説していきたいと思います。「高気密・高断熱」と、よく気密と断熱が一緒になって表現されますが、当然のことながら気密と断熱では役割が異なります。
世間ではどちらかと言えば「高断熱」にフォーカスされておりますが、気密の重要性をまずは最初にお伝えしていきたいと思います。

気密施工の重要性とその役割

気密施工の重要性とその役割は以下の2点に集約されます。

・壁体内(壁の中)の結露を防ぐこと
(構造体の腐朽、断熱材の劣化を防ぐ目的)
・24時間換気システムを計画通り機能させること

そして気密施工に欠かせない「気密シート」
気密シートは建物の耐久性と室内の空気質に関わる重要な要素であることは今一度理解しておいていただければと思います。
それぞれ詳しく説明していきます。

壁体内(壁の中)の結露を防ぐ

なぜ壁の中に結露が発生するのか?
壁体内結露は「夏型結露」と「冬型結露」に分類されます。それぞれの原理を説明していきますが、まず空気中の水蒸気は、湿度の高い側から低い側に移動する性質があることを大前提として頭に入れておいてください。
壁の中で結露が発生すると、断熱材がその水分を含むことで断熱性能が劣化します。またその水分が構造体(木材)を腐らせる不朽菌の発生を促すことで、構造体の耐久性に影響を及ぼします。

【夏型結露】

・夏の外気は温度も高く多くの水蒸気を含んだ状態(高温多湿)です。室内の空気はエアコンで冷やされ除湿された状態ですので、夏は温度、湿度とも外部から室内へ移動します。(図1)
温度は断熱材を通る過程で徐々に下がることで露点温度も下がり、空気中に含みきれない水蒸気が壁の中で室内側に結露となって現れます。
これが夏型結露の原理です。

【冬型結露】

・冬は外気が冷たく乾燥状態となり、室内の空気は暖房で温められ加湿器などの加湿もあって夏とは逆の動きとなります。(図2)
室内の温度、湿度は徐々に外壁側へ移動し、断熱材を通る過程で徐々に下がることで露点温度も下がり、空気中に含みきれない水蒸気が壁の中で屋外側に結露となって現れます。
これが冬型結露の原理です。

夏型結露と冬型結露の原理の説明画像

さて図1と図2を見比べて、「あれっ!?」って、何か気づかれた部分がないでしょうか?
そうです!「夏型結露」は気密シートがあると結露リスクが高まり、「冬型結露」は気密シートがないと結露リスクが高まるのです。
この夏型結露と冬型結露の対策は実は相反するということがあまり知られておりません。(気づいている方が少ないとも言えます)
「気密シートは使った方がいいの?使わない方がいいの?」という疑問が湧くはずですが、答えは「気密シートは使う!」が正解となります。
なぜなら、日本では冬の方が夏よりも圧倒的に壁体内(壁の中)結露リスクが高いと言われており、日本の家作りの基本は「冬型結露」を防ぐ壁構成が標準的な考え方となっているからです。
(ただし沖縄のみ「夏型結露」を防ぐ壁構成がメインの考え方となります。)
気密シートについては後ほどあらためて説明します。

夏型結露とその対策の解説画像
冬型結露とその対策画像

ここで今このブログを読んでいただいているみなさんの中には、「水蒸気って壁を貫通するのか!」って思う方もいるかと思いますが、水蒸気は容赦なく侵入していきます。
例えばコンセントやスイッチプレートなどのわずかな隙間や目に見えない壁の隙間から水蒸気は壁の中に吸い込まれていくのです。

次に「24時間換気システムを計画通り機能させること」について、気密施工がどう影響しているか解説します。

24時間換気システムを機能させる

24時間換気システムについてはあらためてここで詳しく解説する必要は無いかと思いますが、国の基準(法律)で2時間で家中の空気がまるまる1回入れ替わるように計画しなければなりません。

「関連記事:今あらためて第1種換気システムを考えてみる」

どんな換気システムにおいても、換気は「排気と給気」で成り立っております。排気と給気の位置については、必要な場所にバランスよく配置されておりますが、家の気密が甘いと計画通りの換気計画が実行されません。
自然給気・機械排気の第3種換気システムの場合、C値が1.0㎠/㎡というそこそこの高気密住宅でも、実際に自然給気口からは50%の給気しかできないというデーターがあります。(社)北海道建築技術協会
C値0.5㎠/㎡という理想的な高気密住宅でも75%前後の給気となりますので、気密施工に注力されないC値2〜3㎠/㎡の建物では、そもそも24時間換気システムはまともに機能しているとは考えられません。
(機械給気・機械排気の第1種換気システムでは、結果も変わってきます。)

気密施工の重要性がご理解いただけたと思いますので、気密施工のメイン「気密シート」について解説していきたいと思います。

気密シートについて

気密シートにはいくつか種類がありますが、基本的に断熱材の室内側に施工します。(冬型結露対策)
ちなみに最も多く使われているのは、袋入り断熱材と称されあらかじめ断熱材に防湿フィルムがセットされた商品ですが、これらの商品で高気密化を実現するのはかなり難易度が上がるので、高気密施工に力を入れている工務店はほとんど使っておりませんのでここでは割愛させていただきます。

【気密シートの種類】
・厚み0.1mmの気密シート/防湿シート
・厚み0.2mmの気密シート/防湿シート
 (寒冷地用)
・調湿気密シート(0.2~0.3mm)

大まか上記3つの種類がいくつかのメーカーより販売されております。
気密シートについては、寒冷地ではない地域では0.1mmの気密シートが一般的だと思いますが、弊社では0.2mmの気密シートを標準化しております。
たった0.1mmの違いですが、厚みが倍違うと触った印象も全く異なり明らかに丈夫さも違いますので、施工中の破れリスクなどを考えるとやはり0.2mmの選択がベストかと判断しております。
実際に「内部結露計算」においても、0.1mmの気密シートより0.2mmの気密シートの方が少し優位な数値が得られます。

次にあまり聞きなれない「調湿気密シート」について少し解説を加えます。

調湿気密シートとは

調湿気密シートは、可変透湿で「夏型結露」「冬型結露」の両方に作用する優れた気密シートです。
言葉で説明すると、「一定の湿度までは吸湿・保持しながら気密性能を発揮し、吸湿の許容量を超えると湿度の低い側へ放湿する」という性質を持った気密シートと言えます。

調湿気密シートの解説画像

先ほど、「夏型結露」と「冬型結露」の対策は相反すると説明しましたが、この調湿気密シートを使うことで両方の対策が可能となるわけです。

まとめ

気密施工の重要性を説明してきましたが、気密施工ができているか否かの確認は「実測(気密測定)」以外の方法がありません。
測定値は「C値(相当すき間面積㎠/㎡)」という値で示されますが、当然数値が小さい方が建物の隙間が少ないという判断になります。
ではC値はどのくらいが適正なのかを説明していきます。
まず一般的な高気密の評価としてC値1.0㎠/㎡以下という指標があります。
ところがここ数年で、C値1.0くらいだと少々物足りないという評価になってきています。
HEAT20 の「設計ガイドブック」では目標C値0.7以下という記載がありますので、今はC値0.7以下が一つの目安になるのではないかと思います。
ただし気密性能は築年数の経過による劣化(サッシの建て付けなどが影響します)することを考慮すると、新築時においてはC値0.5以下がベストでは無いかと考えます。
弊社ではC値0.5以下を目標に定めてさまざま施工の工夫を積み重ねてきた結果、最近はC値0.3前後が実測平均値となっております。

それではまた。

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