長期優良住宅の全てを解説|アーキ・モーダ

代表の鈴木です。

もうお馴染みの長期優良住宅というワードですが、その中身を総体的に理解されている方は意外と少ないように感じます。

「長期優良住宅だから安心!」とか、「長期優良住宅だからお得!」とか、どちらかと言えば住宅供給者側からのメッセージが強く、お客様側は「そんなに言うならきっといいに違いない!」と軽く受け取ってしまっているようです。

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長期優良住宅の全てを解説

2021年最初のblogは、この【長期優良住宅の全てを解説】というタイトルで、長期優良住宅の本当の意味を掘り下げて解説していきたいと思います。

1. 長期優良住宅とは
2. 長期優良住宅のメリットト
  ・建物の基本性能の担保
  ・税制の優遇
  ・フラット35の金利優遇
3. 長期優良住宅が最良ではない!?
4. 長期優良住宅で気をつけること
5. 長期優良住宅を建てる時は工期に余裕を!
6. 長期優良住宅にかかる費用
7. まとめ

1. 長期優良住宅とは

さて、そもそも長期優良住宅って何⁉︎

という話ですが、国土交通省のHPを確認すると、下記のように定義されております。

従来の「つくって壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換を目的として長期にわたり住み続けられるための処置が講じられた優良な住宅(以下略)

また

長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための処置がその構造及び設備に講じられた優良な住宅のことです。長期優良住宅の建築および維持保全の計画を作成して所管行政庁に申請することで、基準に適合する場合には認定を受けることができます。(以下略)

以上のように定義されております。

「長期優良住宅ってなかなかいいコンセプトの住宅だな!」と賛同される方も多いのではないでしょうか⁉︎

2. 長期優良住宅のメリット

長期優良住宅には主に3つのメリットがあります。

  1.  建物の基本性能がある一定レベル以上で担保されること。
  2.  税制面で優遇されていること。
  3.  住宅ローンでフラット35を使う場合に金利優遇があること。

それぞれのメリットを掘り下げでいきたいと思います。

長期優良住宅が求める建物の基本性能とは

長期に良質な建物のを維持管理していくために、長期優良住宅はいくつか実現させなければならない要件があり、長期優良住宅の建物に求められる技術的な基準は主に下記の通りとなっております。

ここでは「新築の戸建て木造住宅」に限って解説していきます。

【劣化対策】 劣化対策等級3

床下・小屋裏に点検口を設置

床下空間の有効高さ330mm以上確保など

【耐震性】 耐震等級2以上、または耐震等級1の基準に適合し、かつ安全限界時の層間変形が1/40以下であること。

【維持管理・更新の容易性】 維持管理対策等級3

構造躯体に比べ耐用年数が短い内装・設備について、維持管理(清掃・点検・補修・更新)を容易に行うために必要な処置が講じられていること

(主に排水管の維持管理)

【断熱性能】 省エネ等級4 

H25年に施行された断熱基準

【住戸面積】

延床面積75㎡以上(地域の実情を勘案して所管行政庁が別に面積を定める場合はそれに従う)

一つの階においてその床面積が40㎡以上(細かな床面積の算定基準あり)

以上が新築の戸建て木造住宅おける長期優良住宅を取得する上での技術基準となります。

どんな間取りの家でもこれらの要件をすべて満たさなければ長期優良住宅の認定を取得することができませんので、長期優良住宅の認定を取得できる建物はある一定以上の基本性能は担保されると言えます。

しかしよく家づくりについて勉強されている方からみれば、「あれっ!?こんなもん!?」と感じる方も多いのではないでしょうか!

のちに解説しますが、長期優良住宅の真髄は建物の性能確保以上に住んでからの維持管理にあります。

長期優良住宅の税制面の優遇

長期優良住宅の普及は国策でもあり、積極的な税制優遇が設けられております。

順番にご紹介していきます。

【住宅ローン控除(所得税及び住民税の税額控除)】

簡単に説明すると、控除対象借入限度額が一般住宅の4000万円から長期優良住宅では5000万円に拡充され、年間の最大控除額が50万円、10年間の総額で500万円(一般住宅は400万円)の優遇があるというものです。

(消費税10%への増税に伴い控除期間が10→13年間となっています)

ここで「えっ、500万も優遇されるの!? すげ〜お得じゃん!」と安易に受け取ってはいけません。

借入額が大きく年収も高く、多くの所得税および住民税を納めている方のみ最大500万円優遇されるというのが現実です。

ざっくりとですが、年収が800万以上あって借入額が4,300万以上で初めて長期優良住宅のメリットが出ます。

それ以下の場合は一般住宅でも長期優良住宅でもほとんど税優遇の差がありません。

現行の税優遇がすでに大きく効いているので長期優良住宅にしたからと言って、一般住宅と大きな差が出にくくなっています。

また住宅ローンを組まずに現金で長期優良住宅を取得した場合には【投資型減税】が用意されています。

ここでは詳しい説明は省きますが、この投資型減税は初年度一発のものです。

【登録免許税の税率軽減】

登録免許税は住宅を登記する場合にかかる税金で、所有権保存登記で一般住宅の場合0.15%、長期優良住宅は0.1%とわずか長期優良住宅は0.05%優遇されているものです。

この税率はその建物の課税標準額(固定資産税評価額)に対してかかってくるのですが、そもそも固定資産税評価額は実際の建設費と比べ大幅に安く計算されますので、0.05%の違いだと一般住宅と長期優良住宅とでは概ね1万円以内の違いしか出ません。

【不動産取得税の減税】

建物を取得したときに課税される不動産取得税についても優遇があります。

不動産取得税とはその名の通り、取得したときに1度だけ課税される税金で、毎年かかる固定資産税とは異なります。

税率は一般住宅、長期優良住宅共に3%となります。

不動産取得税は「不動産価格×税率」となりますが、ここでいう不動産価格は、【登録免許税】にところでお話ししたように

固定資産税評価額となります。

また、さらに不動産取得税には固定資産税評価額から一般住宅では1200万円に控除、長期優良住宅では1300万円の控除が効きます。

一般住宅では 不動産取得税=(固定資産税評価額-1200万円)×3%

長期優良住宅では 不動産取得税=(固定資産税評価額-1300万円)×3%

という計算になります。

それでは実際に固定資産税評価額とはどのくらいなのでしょうか?

固定資産税評価額は家を建てたあとに税務署による現地調査で決まるのですが、概ね建物取得価格の50%前後と言われています。(地域によって異なります)

場合によっては、一般住宅で適用される1200万控除以内で評価され、実質不動産取得税は0(ゼロ)になるケースも多いです。

かかったとしても、長期優良住宅と一般住宅の不動産取得税の差は最大3万円です。

(1300万円-1200万円)×3%

【固定資産税の減額処置】

次に建物を所有することで毎年かかる固定資産税についてです。

税率は一般住宅、長期優良住宅共に1.4%となります。

減額内容も一般住宅、長期優良住宅共に税額に1/ 2と一緒です。

違うのは一般住宅の場合は、減額期間が3年間、長期優良住宅が5年間となっており、長期優良住宅の方が2年間期間が長くなっております。

一般的な大きさの建物で一般的なグレードの建物であればこの2年間で生まれる差は概ね15〜20万円ほどです。

【住宅取得等資金の贈与非課税の特例】

長期優良住宅に限らず、「質の高い住宅」を計画すると、親や祖父母から住宅取得資金の贈与を受けた場合に一定額まで非課税となる制度です。

ここでいう質の高い住宅とは以下のいずれかの性能を満たす住宅のことです。

省エネルギー性の高い住宅(断熱等級4または一次エネルギー消費量等級4)

耐震性の高い住宅(耐震等級2以上または免震住宅)

バリアフリー性の高い住宅(高齢者等配慮対策等級3以上)

長期優良住宅も質の高い住宅になりますので、この特例が適用されます。

令和3年4月から12月までは、一般住宅の場合は700万円、長期優良住宅(質の高い住宅)は1200万円までの贈与分については非課税となっています。

贈与を受けた年の翌年の3月15日までに引渡しが完了していることが条件となります。

親や祖父母から住宅取得資金を贈与受ける場合は大きいですよね!

【長期優良住宅の金利優遇】

こちらはフラット35を利用されるお客様に限定されますが、フラット35Sを利用する場合、より金利の安い【フラット35SのA タイプ】の利用が可能となります。

もともとフラット35の中でも、質の高い住宅に適用できるものとしてフラット35S(金利Bプラン/当初5年間フラット35金利▲0.25%)がありますが、長期優良住宅のようなさらに高性能な住宅にはフラット35S(金利Aプラン/当初10年間フラット35金利▲0.25%)というより長い期間お得な金利優遇があります。

このように長期優良住宅の税制面での優遇は、すでに一般住宅でも十分に税制面での優遇が進んでいるのであまり大きな差が現れないことは認識しておくべきことです。

3. 長期優良住宅が最良ではない!?

長期優良住宅は建物の基本性能が担保された高性能住宅と位置付けられておりますが、耐震性能、断熱気密性能においては最良のレベルとはなっていません

この2つの性能は建物において特に重要なものとして認識されており、さらに上の性能値が高性能住宅では標準になりつつあります。

【長期優良住宅の耐震性能】

耐震性能においては、長期優良住宅の基準は耐震等級2以上とされており、ハードルは低めに設定されております。

耐震等級の算出方法は構造計算(許容応力度計算)によるものと簡易計算によるものがありますが、長期優良住宅で申請されている建物のほとんどは簡易計算による耐震等級2、又は耐震等級3で計画されております。

理由は簡単で、申請する側の手間と時間と労力がより簡単だからです。

ところが長期優良住宅の申請的にはそれで問題ないのですが、実際の耐震性能は構造計算によって導かれる耐震等級と簡易計算によって導かれる耐震等級とでは大きな乖離があります。

簡易計算で耐震等級が導かれた長期優良住宅は、耐震性能的には平均より少し上というレベルの建物が多いのが現状です。

【長期優良住宅の断熱性能】

断熱性能に関しては、長期優良住宅では断熱等級4という現在の国の基準の中では最高等級が条件となりますが、実はこの基準は平成25年にできた7年前のもので、今よく耳にするZEHやHEAT20で推奨されている断熱性能とはかなりかけ離れている基準となります。

長期優良住宅の基準は、高気密高断熱住宅を謳うには少々物足りない基準と言えるのです。

長期優良住宅が求める耐震性能や断熱性能が最高レベルを求めない理由としては、誰でも平均以上の性能を確保した住宅を広めたいという国の思惑があります。

意外かもしれませんが、最高レベルを要求すれば、まずハウスメーカー(大手を含め)が対応できません。

そして多くの中小工務店もなかなか対応できず、普及には繋がらないということを考慮(ハウスメーカーの圧力もあって)しての国の判断なのです。

4. 長期優良住宅で気をつけること

長期優良住宅という言葉をもう少し噛み砕いて表現すると、「最低限の確保すべき住宅性能を担保した住宅を計画し、長期に維持管理して長く使い続けられる住宅とすること」と表現できます。

建物を長期に保存できるものとして計画し資産価値を高めようというのが長期優良住宅のテーマです。

ここで勘違いをして欲しくないのですが、長期優良住宅の家を建てれば勝手に家が長持ちするわけではありません。

住む方の維持管理が大前提となります。

長期優良住宅の認定基準は、特別高耐久な素材を使うことではなく、認定基準の多くは、長期メンテナンス性に優れた設計計画にあります。

車に例えるとわかりやすいと思いますが、愛車を長くコンディション良く保つためには、定期的なメンテナンスが必要不可欠であることは誰でも理解できることと思います。

1000万を超える高級車でも、100万前後の安い車でも長く良い状態を保つためには定期的なメンテナンスが必要です。

価格が高い車ほど維持費やメンテナンス費用も高くなることは良く知られていることですよね!

実は建物も全く同じことが言えます。

車は定期点検や車検が義務付けられておりますが、建物の維持管理におけるメンテナンスは特に法律で義務付けられておりませんので、住む方が積極的にメンテナンスを継続することを求められているのが長期優良住宅なのです。

そのために、お施主様側の維持管理が計画的に必要となります。

長期優良住宅の維持管理に関する計画書にはメンテナンス項目とメンテナンス時期が記されてしますので、その通りに管理していく必要があり、その都度点検やメンテナンス費用がかかってきます。

長期優良住宅を建てれば長期にメンテナンスが不要だと認識している方が多いですが、それは逆で長期優良住宅の認定を所得した建物はかえってメンテナンス頻度と費用は嵩んできます。

家も車も長く良好な状態を保つためにはそれなりのメンテナンスと費用がかかることは避けて通ることができないのです。

「長期優良住宅だから長持ちしますよ〜」なんて簡単に言う営業マンがいる会社は要注意ですよ!

5. 長期優良住宅を建てる時は工期に余裕を!

長期優良住宅は、図面の計画段階で審査期間のチェックが必要です。

通常建物は確認申請がおりれば着工できますが、長期優良住宅は確認申請が降りてから申請業務が始まり、そのチェックが完了しないと着工することができません。

地域や時期にもよりますが、なんだかんだ1ヶ月くらいかかることもありますので、その分建物の着工及び完成は遅れます。

入居時期が決まっており、工期に余裕がない場合は注意が必要です。

不思議なのは、長期優良住宅は着工前の設計審査だけで、建物完成時にその通り施工されているかのチェックは行政では行われておりません。

6. 長期優良住宅にかかる費用

長期優良住宅の申請はそれなりの書類を要求され、申請費用もかかります。

長期優良住宅の申請費用は、おおよそ平均で20万〜30万が相場かと思います。

また、長期優良住宅の仕様においてかかる工事費のUPは10万から50万くらいだと推測されます。

申請費と合わせれば40万から80万のコストアップとなります。

これは建築会社によってもかなり幅があるのが現状で、もともと性能にこだわっている建設会社であれば、そもそもほぼ標準で長期優良住宅レベル、或いはそれ以上の性能は満たしているはずですし、そうでないローコスト系の建設会社であれば長期優良住宅に伴う追加費用は高額になりがちです。

7. まとめ

長期優良住宅について解説してきましたがいかがでしたでしょうか!?

実は長期優良住宅の認定を受けた建物でないと長持ちしないのかと言えば決してそうではありません。

高性能住宅を推進している建設会社で建てて、しっかりとメンテナンス意識を持って建物に愛情を注いでいけるのであれば、あえて長期優良住宅にしなくても十分長寿命の建物が実現できます。

今は国が良質な建物の普及に力を入れているので、税制面のメリットを抱き合わせてこの制度を推進しておりますが、税制優遇に関しては、多くの方がイメージしてるほどの恩恵があるかと言えばそうとも言えません。

一般的な規模の住宅でよほど大きな借り入れをする場合や高収入の方でない限り、長期優良住宅にかかる申請費用や仕様UPの費用の方が、税優遇で戻るお金よりも大きくなります。

長期優良住宅を選ぶか否かは建てる方の意識にかかっています。

そしてお客様の建設会社を選ぶ目も試されているところだと思います。

よくよく考えてお施主様の方から長期優良住宅の認定を取るのかどうかを建設会社に意思表示できるようになるといいですよね!

それではまた。

2020.01.10

本年も家づくりにおいて、できる限り有益な情報をお届けしたいと思いますのでよろしくお願いします!

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