注文住宅の目指すべき温熱環境とは|アーキ・モーダ

代表の鈴木です。

タイトルに「注文住宅の温熱環境」というワードを使いましたが、そもそも温熱環境っていったい何でしょうか!?

わかりやすく言えば、その家の室内環境(特に温度や湿度)が、快適に保たれているのかどうかをを示す環境のことです。

注文住宅を取り巻く温熱環境の世界には、「省エネ等級」とか「ZEH」、「HEAT20」、「BELS(ベルス)」、「認定低炭素住宅」、「パッシブハウス」など様々な評価方法や基準が乱立していますが、一般の消費者であるお客様からみたら

「何がなんだかわからない!」

「いったい何がいいの!」

となっているのではないかと思います。

実は我々建築のプロと呼ばれる実務者であってもきちんと整理できている人は決して多くはないのではないかと思います。

それほど複雑怪奇に見える、感じる世界です。

そこで多くの方が抱えているであろう注文住宅の温熱環境についてのモヤモヤとした霧が少しでも晴れたらいいと思い、本日は改めてそれぞれを整理してみたいと思います。

注文住宅が目指すべき温熱環境のブログ画像

各断熱基準を解説

お客様には様々なニーズがあると思います。

☆「環境に優しい暮らしができる家が欲しい」

聴こえはいいですが意外と少数派だと思います。

☆「なるべく光熱費がかからない家が欲しい」

環境云々より、こちらの方が本音だと思います。

☆「とにかく冬暖かい家が欲しい」

みんなそう思いますよね!

このようなお客様のニーズに答えていくのは主に民間企業や民間団体なのですが、国は国としての思惑があります。

それは地球温暖化を防ぐべくCO2削減を目的とした政策で、一般消費者に直接メリットが生まれる税制面の優遇とセットにして普及を目指すという思惑です。

民間企業や民間団体でも国が掲げる政策もどちらも目指すべきゴールは同じなのですが、アプローチの仕方が異なるので様々な評価基準が乱立しているのが現状です。

省エネルギー基準

まず基本となる住宅の【省エネルギー基準】からご説明します。

住宅の省エネルギー性能の評価については2つの基準が存在しております。

○ 【外皮性能】 住宅の窓の性能(日射遮蔽)や屋根、外壁など建物をおおう断熱性能を評価する基準

○ 【一次エネルギー消費量】 住宅で使われる設備機器などの消費エネルギーを評価する基準

そもそも住宅の省エネルギー性能は、外皮性能と一次エネルギー消費量の基準をどのレベルで組み合わせるかで評価するものです。

外皮性能は、いわゆる建物の断熱性能のことで外皮平均熱貫流率(UA値)で表現されます。

一次エネルギー消費量とは、その建物で計画されている【暖房設備】【冷房設備】【換気設備】【給湯設備】【照明設備】が消費するエネルギー「MJ」のことで、一定の生活スケジュールに基づく設備機器の運転条件などを想定し計算され基準値との削減率を評価します。

この【外皮性能】と【一次エネルギー消費量】が住宅の省エネルギーを考える上での基本の基となります。

次に整理していきたいのは、省エネルギー基準のランクについてです。

省エネ等級

【省エネ等級】という言葉を聞いたことがあるかと思います。

省エネルギー基準のレベルに合わせ等級で表示する「住宅性能評価制度」の一つです。

住宅性能評価制度は2000年4月1日に施行された「品格法」に基づく制度で、住宅の性能が10分野で評価する物差しが示されました。

○ 構造の安定

○ 火災時の安全

○ 劣化の軽減

○ 維持管理更新への配慮

○ 温熱環境

○ 空気環境

○ 光・視環境

○ 音環境

○ 高齢者への配慮

○ 防犯

この10項目のうち「温熱環境」が、住宅の省エネルギーを評価する項目です。

住宅性能表示制度において、外皮性能(建物の断熱性能)は等級1〜等級4の4つの評価基準があります。

断熱等性能等級:建物の外皮性能(外壁や窓など)を評価

等級4 【H25(2013年)基準相当】 次世代省エネルギー基準

等級3 【H4  (1992年)基準相当】

等級2 【S55(1980年)基準相当】

等級1  その他

一次エネルギー消費量においては等級1、4、5の3つの評価基準があります。

等級5 【低炭素基準相当】等級4と比較して10%以上の削減率

等級4 【H25基準相当】設計一次エネルギー消費量が基準一次エネルギー消費量を上回らないこと

等級1  その他

温熱環境の基準においてもう一つ考慮しなければならないことがあります。

それは地域(エリア)に合わせた基準を考慮しなければならないことです。

北海道と九州では気候が全く違うので同じ基準で評価することは現実的ではありません。

そこで全国を8つの地域区分(断熱地域区分)に分けて、それぞれの地域の気候を考慮した「基準値」が設定されています。

断熱等級4は最高レベルにあらず!?

「住宅性能評価制度」は平成12年(2000年)に運用が開始され、平成27年(2015年)に見直しが実施されております。

すでに制度運用から20年以上、見直されてからも6年(2021年現在)が経過しました。

それでも今なお多くの住宅会社、大手ハウスメーカーも含めて、この制度の評価基準に沿った建物の断熱性能を計画しています。

国土交通省が旗振りをしているまさに国のお墨付きとならば当然と言えば当然です。

しかし国が主導する決め事は、とにかく難易度を上げずに広く普及させることが第一の目的なので、最高等級とされている次世代省エネルギー基準の等級4は、今の高断熱住宅の基準においては最低限実現すべきレベルと認識されています。

国が推奨している「長期優良住宅」の条件や、多くの人が利用するフラット35の金利優遇が、等級4を基準にしているのはそのためです。

「国が定めた最高水準の断熱性能、最高等級4を確保!」というハウスメーカーお決まりのセリフにみんな惹かれていきます。

「国の基準だから!」、「大手ハウスメーカーが言うのだから!」「きっとこれで十分⁉︎」と多くの方が思うのでしょうね。

もう一度言いますが、次世代省エネルギー基準の最高等級4は、最低限確保すべき断熱性能です。

次にZEHについてお話しします。

【ZEH】

家づくりを考えたことがある方の多くはこのワードは聞いたことがあるかと思います。

やはり国も国際的な地球温暖化対策に待ったなしの状況の中、さらに省エネ性の高い住宅(カーボンフリー)を普及させるべく、経済産業省が旗振りとなり2015年12月にZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)という基準を制定しました。

ZEHとは何かと言えば、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」です。
(以上経済産業省のHPより引用)

先にご説明した、「外皮性能」と「一次エネルギー消費量」で導かれた住宅の消費エネルギーを、再生可能エネルギーで相殺し消費エネルギーを「ゼロ」にするという住宅がZEHとなります。

ここでいう再生可能エネルギーとは太陽光パネルで発電する創エネルギーのことで、言い換えれば、ZEHは極力住宅の消費エネルギーを抑えた上で、太陽光発電で作り出すエネルギーでその家の光熱費をまかなうことを目的としています。

今はこのZEH基準をさらに上回る【 ZEH+】(ゼッチプラス)や【次世代ZEH+】の基準も登場しています。

「外皮性能」も省エネルギー基準よりもさらに高く設定されており、いわば究極の省エネ住宅なのですが、太陽光発電や高効率設備という設備に少々重きを置いた家づくりとなり、建築費も後のメンテナンス費用も高くつくことは避けられません。

大きな太陽光発電が装載できる屋根面積があり、日射条件が良いエリアや環境であればZEHは比較的楽に計画できますが、都心部で近所に高い建物があったり、隣家に囲まれた狭小住宅になるとなかなかハードルが高いのが現状です。

実際にZEH住宅は、東京都心や近郊エリアよりも少し郊外のエリアの方が普及率が高いのはそのためだと思います。

【HEAT20】

建物の温熱環境を語るうえで、まずベースになるのが【省エネルギー基準】であり、それに再生可能エネルギーを組み合わせてエネルギー消費量をゼロにする目的がZEHでした。

省エネルギー基準には「外皮性能(断熱性能)」と「一次エネルギー消費量」があると説明させていただきましたが、特に外皮性能に特化した基準が【HEAT20】です。

HEAT20は「一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」というところが示している断熱基準で、令和3年の今現在、高断熱住宅の指標として今もっとも理想的な断熱レベルを評価する基準として認識されています。

外皮性能(断熱性能)に目を向ける理由は、外皮性能は生涯にわたって劣化しない性能でランニングコストがかからない性能だからです。

一次エネルギー消費量を左右する高効率設備「エアコン」「換気設備」「給湯設備」「照明設備」など機械設備は毎年のように新商品が出ますし、数年後にはメンテナンスが、そして十数年後には交換サイクルが必ず来ます。

そう考えると、まず将来取り替えの効かない窓や断熱性能にとことんこだわって、数十年先まで見据えた外皮性能を目指すことの合理性が納得できます。

当然建物の外皮性能(断熱性能)を向上させれば、住宅の冷暖房設備(エアコンなど)の消費エネルギーも削減できますので、住宅の省エネルギー化は、まず外皮性能(断熱性能)に目を向けるべきと言えます。

HEAT20はG1、G2グレードとがあり、それぞれZEH基準を超える断熱性能(UA値)を示しています。

全国の高断熱住宅をリードする工務店たちはこのHEAT20の基準を指標としていますが、ハウスメーカーは一部を除いてHEAT20の基準を採用しているところはありません。

ここで「省エネルギー基準」「ZEH」「HEAT20」における求められている基準をまとめた表を添付しておきます。

各断熱基準の比較の画像

UA値は数字が小さいほど高性能

 

【BELS(ベルス)】

BELS「建築物省エネルギー性能表示制度」のことで、建物の省エネ(燃費)について評価認定する制度です。

言い換えれば、計画した「外皮性能」や「一次エネルギー消費量」の省エネ性能を第三者評価期間が公的に評価し認証する制度です。

車のカタログに出てくる「燃費表示」のイメージですね。

燃費表示といっても、BELSの場合は☆の数で評価を表現しますが、「BEI値」という計算で数値をはじき、☆の数に置き換えています。

BEI値は「省エネルギー性能指数」のことで、【設計一次消費エネルギー / 基準一次消費エネルギー】の計算によって導き出されます。

設計一次エネルギーとは、その建物で計画されている【暖房設備】【冷房設備】【換気設備】【給湯設備】【照明設備】が消費するエネルギー「MJ」のことで、一定の生活スケジュールに基づく設備機器の運転条件などを想定し計算されます。

このうちの【暖房設備】と【冷房設備】は建物の断熱性能(外皮性能:UA値)と、日射取得率(平均日射熱取得率:ηAc)によって消費エネルギーは大きく影響を受けますので、外皮計算によって外皮性能値:UA値の計算も必要となります。

基準一次エネルギーとは、設計一次エネルギー消費量が省エネ基準に適合していることを判断するための基準値です。

この基準値は、地域の気候条件や建物の床面積によって設定が変わるため、Webプログラムにて諸条件を入力することによりその値を確認することができるものです。

年間設計一次エネルギー

☆☆☆☆☆           BEI ≦ 0.80

☆☆☆☆      0.80< BEI ≦ 0.85

☆☆☆       0.85< BEI ≦ 0.90

☆☆        0.90< BEI ≦ 1.00

         1.00< BEI 

☆の数が多いほど、(BEI値が低いほど)燃費性能に優れた省エネな建物と評価されます。

【認定低炭素建築物】

二酸化炭素排出の抑制を目的とした建築物で、国ではなく所管行政庁(都道府県、市又は区)が認定を行います。

新築時において、最初にお話しした省エネ法の一次エネルギー消費量が▲10%以上になることが求められる基準です。

昨今カーボンニュートラルという言葉が世界共通の合言葉となり、地球環境保護、改善を目標に各国が真剣に取り組んでいます。

その背景もあって、低炭素建築物とは特に省エネ性能を重視した建物です。

長期優良住宅のように建物の耐震性能や劣化対策、そして断熱性能など総合的に加味するのではなく、省エネ基準に特化した評価なので比較的達成しやすいと認識されているようです。

建物の高性能化を求めるのであれば、理想は長期優良住宅だけれども、特に省エネ性能だけに着目するのであれば、認定低炭素建築物に着目するということと認識していただければと思います。

【パッシブハウス】

最後にパッシブハウスについての解説ですが、パッシブハウスとは、ドイツパッシブ研究所が規定する性能認定基準です。

ここでいきなり異国のドイツが出てきましたが、ドイツに限らず住宅の断熱性能基準は世界的にみて日本ははるかに遅れていると言われています。

工業先進国であるドイツならわかるけど…と思われると思いますが、隣国の韓国や中国と比べても大きく差をつけられているのが現状です。

これは国の政策が大きく影響しているのですが、もたもたしている国の基準に甘んじることなく、世界のトップ基準を示し提唱しているのがパッシブハウス基準です。

パッシブハウスは、単に断熱性能向上や省エネ設備を武装するだけでなく、太陽エネルギーを活かした設計手法(太陽光発電という設備に頼る手法ではありません)を積極的に取り入れたもので、設計、計画ともに非常に難易度も高いものとなっています

HEAT20でも昨今G3という基準が示されましたが、G3の基準はパッシブハウスの基準を想定しています。(断熱地域区分:6地域でUA値0.26)

流石にそこまでは…というレベルの基準ですが、パッシブ設計という言葉は一人歩きしており、少々気安く使われている面もありますが、今現在では断熱、省エネ性能においては他の基準と一線を画す最高峰のレベルと言えます。

ただし間取りの制約や敷地条件、分厚い壁厚、そして認定制度や高コストなどがネックとなり、広く普及していくのはまだまだ先だと感じています。

まとめ

温熱環境に関するいくつかの基準をご説明してきました。

目指すべき基準とその評価の仕方で着目するレベルが変わってきますが、まずは外皮性能(断熱性能)と一次エネルギー消費量の組み合わせが住宅の快適な温熱環境を実現することをご理解いただければと思います。

そして目指すべき性能は外皮性能(断熱性能)としてはHEAT20の基準です。

一次エネルギー消費量を左右する高効率設備については、今の住宅設備の多くは高効率設備となっておりますのでそれほど神経質にならなくても大丈夫です。

しっかりと外皮性能(断熱性能)を担保した上で、太陽光発電のような創エネルギーを組み合わせることで、より経済的で地球環境に配慮した住宅となっていきます。

これから日本も住宅のより省エネルギー化を推進すべく基準や法整備が急速に進むと思われます。

10年、20年後のスタンダードを意識した注文住宅の温熱環境を今から整えるべきです。

それではまた。

関連記事:【長期優良住宅の全てを解説】

関連記事:【どこまでこだわる!?住宅性能(高気密・高断熱編)】

2021.05.07

アーキ・モーダ公式HP

〒351-0115
埼玉県和光市新倉1-11-29 志幸20ビル 101号
株式会社アーキ・モーダ
TEL:048-450-3810
Mail:mail@archimoda.co.jp

本年も家づくりにおいて、できる限り有益な情報をお届けしたいと思いますのでよろしくお願いします!

またLINE公式アカウントにて、「なんでも質問に答えます!」をやっておりますので、ぜひ登録いただきどんどんご質問いただければと思います。

【アーキ・モーダ LINE公式アカウント】