2025年建築基準法改正から読み解く最適解の構造計画|アーキ・モーダ

2024.06.28
代表の鈴木です。

来年の2025年4月より建築基準法が改正されることはご存知でしょうか。
改正内容は主に「省エネ対策の加速」と「木材利用の促進」が2大テーマになっております。
このテーマに付随して、建物の省エネ化や太陽光発電パネルの普及、促進に伴う建物の重量化が考慮され、より構造安全性の基準も高められることになりました。
今日は一般的な住宅規模の構造安全性の基準がどの様に改正されるのかに絞って確認し、これからの住宅における構造計画についての最適解を探っていきたいと思います。

2025年 建築基準法改正から読み解く最適解の構造計画の解説ブログ画像

四号特例の縮小

なんといっても、この「四号特例の縮小」はこれからの木造住宅の建築において大きな変化をもたらすと言わざるを得ません。
最初に四号特例とはなんだったのかを解説いたします。

・延床面積500㎡以下、高さ13m以下、軒高9m以下、2階建て以下の木造住宅(日本の木造住宅の9割近くはこれに該当します)は、確認申請時に構造の審査を省略することが可能という制度で、設計士である工事監理者が設計図書通りに施工されたことを確認すれば、検査も省力することができる。これが「四号特例」の中身です。

要は「住宅規模の木造住宅は、住宅を設計する建築士が責任をもって計画、確認をしてくださいね、国(審査機関)は構造のチェックはしませんので!」ということです。

もちろん国も設計士個人に丸投げしているわけではなく、木造住宅の構造安全性の検証方法を2つ用意して、「どちらかで必ず検証して下さいね!」としてたわけです。それが「壁量計算」と「構造計算(許容応力度計算)」です。
そして今回の建築基準法の改正では、現行の「壁量計算」に大きなメスが入ることとなります。

壁量計算と構造計算の違い

壁量計算とは、簡単に言うと地震や風圧に耐える壁(耐力壁)の量(数)を住宅の床面積に応じて算出し、その壁の配置(バランス)を整える計算のことを言います。また柱の接合部の強度(N値)を計算し、壁量計算と合わせて木造住宅の構造安全性を担保しています。
計算内容は非常にシンプルかつ簡易なもので、A3の紙1枚ほどでこの計算は終了してしまいます。

構造計算(許容応力度計算)とは、まず計画する建物の重さ(自重)を計算するところから始まります。地震や風圧など建物に与える外圧は、建物の自重に比例して大きくなりますので、まずは正確にその建物の重さを把握することが重要と考えます。そして建物の床に乗る人や家財道具の重さ(積載荷重)を想定し、また雪が屋根に積もった時の屋根にかかる重さ(積雪荷重)を考慮します。
さらに太陽光発電パネルやグランドピアノ、大きな本棚、水槽、金庫などがある場合、その重さ(特殊荷重)を計算し、最後にすべての重さを把握します。
(建物自重+積載・積雪荷重+特殊荷重)
計画される建物の重さを正確に把握した上で次の計算に進みます。

1. 鉛直荷重 
建物の重さに材料(柱や梁など)が耐えられるか(下向きの力)
2. 風荷重・地震荷重 
台風や地震などから与えられる外圧を建物の重さから換算し、その時に材料(柱・梁など)が耐えられるか(横向きの力)
3. 層間変形
台風や地震が来た時の建物がどのくらい傾くのかを計算する。
4. 偏芯率
建物の重さと建物の強度が部分的な偏ってないか確認する(バランスの確認)
5. 剛性率
建物の上下階の強度のバランスを計算する。

上記計算で建物に計画される柱、梁の一本一本をすべて検証します。
以上ここまで計算したものが「構造計算(許容応力度計算)」と評価され、その計算書はA4の紙で数百枚の束になります。

いかがでしょうか。
「壁量計算」と「構造計算」とでは検証の信頼性が全く異なることは容易に想像できるかと思います。
関連記事:「木造の構造計算って!?日本一わかりやすい木造の構造計算の解説」

2025年に変わる「構造に関する審査」

まず「四号特例(4号建築物)」がなくなり、新しく「3号建築物」と「2号建築物」に分かれます。

「2号建築物」
延床面積300㎡以下、2階建て以下の木造住宅。(多くの住宅がこの規模に該当します)

・「3号建築物」
延べ床面積200㎡以下の平屋の木造住宅。(郊外には多く計画されていると思います)

今まで「四号特例(4号建築物)」に属していた木造住宅の多くは「2号建築物」に該当する様になります。
この2号建築物に該当する規模の木造住宅は、4号特例で省略可能であった確認申請時に構造関係の規定等の図書の提出が必要となり、構造の審査が行われる様になりました。
「3号建築物」については、今まで通り審査、検査は不要の扱いとなります。

この様にまずは「建築確認・審査・検査」の対象範囲が大幅に変わります。

2025年に変わる「壁量計算」

壁量計算の方法(必要な壁量に関する規定)

・個々の建築物の荷重の実態に応じて検証する方法

構造計算では、詳細に建物の重さ(建物自重+積載・積雪荷重+特殊荷重)を計算することから始めると説明してきましたが、それに近い検証方法となります。
屋根、壁、床の単位重量を把握して階高や各階の面積などの条件から導く方法となりますので、計算に時間がかかる様になります。
そこで国もより簡易に計算できる様に「早見表」が公開される様です。

・より簡易に壁量を確認する方法

今までの壁量計算では「重い屋根」又は「軽い屋根」というざっくりとした分類で計算を進めていました。
「重い屋根」とは瓦葺きが該当し、「軽い屋根」とはスレート葺きや金属屋根などが該当します。
2025年4月より「重い屋根、軽い屋根」という基準がなくなり、太陽光発電パネルの搭載可否などの条件を加えて今までよりも実態に合った条件で計算することとなります。
例えば太陽光発電5Kwを屋根に搭載すると、およそ300Kg強の重さが屋根の上に加わることになります。
ただしこちらの計算は、個々の建築物の荷重の実態を計算するのではなく「屋根の重さ」を中心に検証する方法です。
この計算についても「早見表」が公開されます。
※ ただしこの簡易方法は実際の法施行時には廃止される可能性があります。

・構造計算による壁量の計算

最も信頼性の高い構造計算は今も昔もこれからも基準は変わりません。

さて今までの「壁量計算」と2025年4月以降の「壁量計算」でどのくらい必要壁量が変わるのかをお伝えしたいと思います。

単純な条件での検証となりますが以下の通りです。

・荷重の実態に応じて必要壁量を検証  →  およそ1.3〜1.4倍
・より簡易な方法で壁量計算を検証   →  およそ1.8〜1.9倍

いかがでしょうか?
今までの現行壁量計算がいかに危険で余力のない構造の検証方法であったかが示されたのではないでしょうか。

「耐震等級」を正しく理解する

現在、住宅の耐震性能についてはほとんど「耐震等級」で語られることが一般的になっています。
住宅を建てる検討をしている多くの方々もさすがに耳にしたことがあるかと思います。
実は耐震等級は「壁量計算」と「構造計算」どちらでも導き出すことが可能です。しかしながら例えば「壁量計算」で導き出される耐震等級3と「構造計算」で導き出される耐震等級3とでは実態強度はまるで違います。

耐震性能も2種類ある画像

2025年4月から施行される新しい「壁量計算」では、構造計算との差はもう少し縮まってくると思いますが、現状これだけ差があるのが事実です。

「構造計算」の方が「壁量計算」より必要壁量が少なくなる!?

今までは構造計算の方が、壁量計算よりも詳細な計算を行うことでより安全側に計画され必要壁量が多くなる傾向にありましたが、2025年4月より施行される新しい「壁量計算」においては、構造計算をした建物よりも必要壁数が多く算出される可能性があることがわかっております。
では構造計算した建物よりも安全という評価なのかといえば決してそうではなく、構造計算で構造の安全性を検証した方が、より合理的な構造計画を実現できるという解釈になります。
2025年の4月以降は、「構造計算」の優位性がより際立ってくるものと予想されます。

まとめ

今も今までも、多くの方は「現行の壁量計算」を行なった木造住宅を建てております。
ただし2025年4月以降はそれらの木造住宅は「既存不適格」の建物に変わってしまいます。もちろん計画時では合法だったので、何か不都合なことが起こることはありませんが、資産価値は落ちると言わざるを得ないでしょう。
現行の壁量計算は今から約40年以上前の基準で、それから幾度か改正があり改めて2025年4月に大きなテコ入れが入ることとなりました。
おそらくこれから先、大きな地震を経験するたびに改正されていくと思いますが、「構造計算(許容応力度計算)」の信頼性は今も今までも、そしてこれからも揺るぎないものとして存在し続けるはずです。
ならばいっそのことこれからは「構造計算」を行なった住宅を建てるべきかと思いますがいかがでしょうか。
「構造計算」と「壁量計算」の選択肢がありますが、私は「構造計算」の選択が最適解と考えます。
アーキ・モーダではすでに住宅の規模に関わらず、全ての木造住宅の設計において「構造計算」を実施してきました。2025年4月以降も慌てることは何一つありません。
「構造計算」と「壁量計算」、どちらを選ぶかは住宅会社ではなく、住宅を建てるあなたなのです!

それでまた。

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