【断熱材について!】SE構法

代表の鈴木です。

先日5月4日に投稿した〜暑さを克服する家づくり〜にて

https://www.archimoda.jp/blog/2789

暑さを克服するための必要な対策として3つのポイントを紹介させていただきました。

3つのポイント

  1. 適切な断熱計画
  2. 通風を考慮した窓計画
  3. 適切な日射遮蔽計画

今回は「適切な断熱計画」について掘り下げていきたいと思います。

断熱計画について、施主様は「ではどんな断熱材を使ってますか?」と聞いてくる方が多いと思います。

最初に断っておきたいのですが、建物の断熱性能は断熱材だけで評価されるものではありません。

いくつかの要因の中の1つに過ぎません。

ただ断熱材は断熱性能を評価する基盤部分であるので、まずは「断熱材」について少し整理してみたいと思います。

一旦調べ始めるとかなりの種類の断熱材が存在していることがわかります。

そうなれば一体どれが一番いいのだろうか?と考えますよね!

しかしなかなか「この断熱材が一番!」という情報にめぐり合うことができません。

何故なら実は断熱材という商品そのものに大きな性能差というものは皆さんが考えているほどあるわけではないのです。

一般的な断熱材の種類

一般的には、グラスウールやロックウールに代表される「繊維系断熱材」アクアフォームやモコフォームに代表される「現場発泡吹き付け断熱材」そしてセルロースファイバーの「自然素材系断熱材」に分けられます。

これに外断熱やら充填断熱やらその両方を施す付加断熱など断熱工法にも話が及びます。

それでは代表的な断熱材の性能値(熱伝導率)を見ていきましょう。

熱伝導率は「熱の伝わりやすさ」を表す数値なので、数字が小さい方が性能が高いと言えます。

それぞれの断熱材の熱伝導率を見てどうでしょうか?さほど大きな違いがあるわけではありません。

実際の断熱性能は「どの断熱材をどのくらいの厚みで使うか」で評価されます。

これが熱抵抗値と呼ばれるものです。

熱抵抗値は「熱の伝わりにくさ」を表す数値で熱伝導率とは逆に数字が大きい方が断熱性能が高いと評価されます。

断熱材性能はこの熱の伝わりにくさを期待されているのです。

熱抵抗値とは

では熱抵抗値はどのように決まってくるのでしょうか?

この式を見ると、断熱材の厚さが分子にきてますので、当たり前ですが断熱材の厚さが熱抵抗値を高めることになります。

よって、どの断熱材(種類)をどのくらいの厚みで施工するかが評価の対象になります。

ここまでは比較的わかりやすい話ですよね。

断熱材の厚みが重要

さて、ではどのくらいの厚みが良いのでしょうか?

日本の木造住宅で採用されている多くの充填断熱工法で考えてみましょう。

充填断熱工法は、読んで字のごとく壁の中に断熱材を充填する工法ですので、壁厚がそのまま充填できる断熱材の厚さの上限となります。

木造軸組工法であれば、柱は105角が標準ですので充填できる断熱材の厚さは105mmとなります。

同じ木造軸組工法でも、例えばSE構法のように柱が120角あれば断熱材の厚さは120mmまで充填できます。

また同じ木造住宅でも2×4工法は幅89mmの構造材で構成されますので充填できる断熱材は89mmが上限となります。

おなじ断熱材を使い、充填できる厚みの上限で施工すれば断熱性能は厚みに比例しますので、SE構法>木造軸組工法>2×4工法という順番になります。

そこで2×4工法に熱伝導率の低いアクアフォームを使った場合の熱抵抗値を計算してみると0.089m/0.036W/mk=2.47㎡k/m

ではSE構法に熱伝導率が若干高かったセルロースファイバーを施工した場合の熱抵抗値を計算してみると0.12m/0.040W/mk=3㎡k/mとなり、また同様に105角の木造軸組工法で計算してみても2.625㎡k/mとなりますので、いかに断熱材の厚さが熱抵抗値(熱の伝わりにくさ)に貢献するかがわかると思います。

断熱材メーカーは断熱材の商品を作っている会社なので、熱伝導率の低さを一生懸命アピールしますが、その厚みを選択するのは施工会社となりますので、どの断熱材がいいかという商品選びだけの目線では、正しい断熱性能の評価ができないことがお分かりいただけると思います。

違った見方をすれば、同じ厚みならば熱伝導率の低い断熱材の方が熱抵抗値が高くなりますので断熱材選びの意味がでてきます。

ならば少しでも熱伝導率の低い値の断熱材を!と考えるのが普通です。

先ほど繊維系断熱材の代表例として高性能グラスウール16Kを挙げましたが、今はもっと高性能な20Kや24K、36Kなども出てきました。

繊維系の断熱材は、用途による種類の豊富さや厚みの豊富さ、そして他の断熱材よりも価格が安いという利点があり広く使われています。

ならば高性能な繊維系の断熱材を使うのが一番いいし費用対効果も高いという当たり前の結論が導き出せます。

施工性が断熱性能に与える影響

しかし、机上の計算通りに実際の建物が施工されるかはまた別問題ということで、話が少々ややこしくなります。

こちらの写真をご覧ください。

繊維系断熱材のメーカーさんが出している断熱施工マニュアルに掲載されている写真です。とっても綺麗に施工されてますね!

当たり前ですが!w

しかし現場を日々生で見ている私から見れば、かなり違和感のある写真です。

これだけの壁面がありながらコンセントやらスイッチ、LAN配管、貫通配管などが写ってません。(お情けで1つコンセントやスイッチの裏ボックスが見えますが・・・)

この写真はあくまでも例として綺麗な施工写真を撮るための現場です。

実際は。。。

このように、場所によってはどうしても配線、配管が集中する壁面が家には何箇所も存在しており先ほどの写真のようにうまく施工するのは難しいのが現状です。

それでも丁寧に施工すれば一定レベル以上の施工は可能ですが、完全かと言えばクエスチョンです。

断熱は隙間なく完全に施工されないと本来期待されている性能が出ないという性質があります。

よって繊維系断熱材は商品、厚み以上に作業レベル(人の手)の良し悪しが相当断熱性能に影響してきます。

設計段階の机上計算では、あくまでも「完璧に施工された」という前提で計算されます。

全ての職人さんが、そして同じ職人さんでもいつどの現場でも「完璧に施工できる」という保証があるか?また現場監督が「完璧に管理できるのか?」疑問に感じませんか?私は疑問です。

ただ、十分教育と管理が行き届いてきちんと施工されている工務店は確かに存在しますが非常に少ないのが現状で、寒冷地に近づけば近づくほど断熱材の施工意識が高い工務店が増えるような気がします。

残念ながら南関東地方の工務店は職人及び管理者の意識は少し甘いのが現状であることは付け加えておきます。

断熱効果は気密がキモ

繊維系の断熱材に比べ、現場発泡吹き付け断熱材や、セルロースファイバーに関してはかなり精度の高い断熱施工が保証できます。

壁の中にどんなに配線や配管が埋設されていてもその材料や工法の特性上綺麗に施工することができます。

これは見た目だけの話ではなく、気密測定を行うと、繊維系の断熱材を施工した一般的な現場よりも確実にいい数値を確認することができます。

断熱と気密は別々の施工ノウハウが必要で、非常に手間がかかる工事ですが、断熱の効果は気密性とセットで考えなければならないので、断熱工事が終わると同時に気密性が確保されている現場発泡吹き付け断熱材や、セルロースファイバーは非常に優秀な断熱材と言えるでしょう。

断熱材の付加価値にも注目

断熱材は、種類によって付加価値を持っています。

例えば繊維系断熱材のグラスウールやロックウールは火災に強い特性が期待できます。

また現場発泡吹き付け断熱材はその強い密着性により、長期にわたり構造躯体と密着し続ける特性があります。

またセルロースファイバーは非常に高い防音性や壁の内部結露防止に強い特性を持っています。

断熱材選びは『コスト、種類、厚み、施工性、種類による特性』を加味してバランスの良い選定が必要であり、何が良くて何が悪いという議論はあまり意味を持ちません。

以上、断熱材に関してお話ししてきましたがいかがでしたでしょうか?

ひとえに「これが!」という断熱材は特定できませんが、その会社ごとにどのようなポリシーを持って断熱材を選定しているのかを注目していただければと思います。

それではまた。

2018.05.18

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