代表の鈴木です。
断熱材にこだわる方は、セルロースファイバーを指名するケースが多いですね。
断熱材について調べれば調べるほど、セルロースファイバーの優位性を目にすることが多いからだと思います。
それでは、セルロースファイバーの優位性はどこにあるのでしょうか?
セルロースファイバーは最強の断熱材なのかを検証してみる
「セルロースファイバーの断熱性能は高い!」と思っている方がとても多いように思いますが、実は他の断熱材と比べても極めて平均的な性能値です。
それぞれの断熱材ごとの熱伝導率(熱の伝えやすさの値で、数字が小さい方が性能が優れている)で比べてみましょう。(単位は省略します)
◯ 高性能グラスウール 0.038 ◯ ロックウール 0.038 ◯ 現場発泡ウレタン吹き付け 0.034〜0.040 ◯ セルロースファイバー 0.040
いかがでしょうか!
世に存在している代表的な断熱材として、「グラスウール」、「ロックウール」、「現場発砲ウレタン吹き付け」などがあり、「セルロースファイバー」と合わせ、この4種類でおそらく日本で建てられている住宅の95%は占めていると思いますので、この4種類で比較してみました。
商品の断熱性能だけで比較すると、セルロースファィバーの数値は他の断熱材と比べて特に良いわけではありません。
実はどの断熱材もあまり変わらないのです。
セルロースファイバーの付加価値
では、セルロースファイバーが他の断熱材と比べてどんなメリットがあるかと言えば、それは断熱性能の違いというよりも他の付加価値によるところが大きいと思います。
セルロースファイバーの付加価値とは!?
セルロースファイバーの付加価値
- 防音性能が高い
- 防火性能が高い
- 壁体内の結露防止の効果がある
- 白蟻やゴキブリなどの害虫予防効果がある
- エコな商品である
以上がよく目にするセルロースファイバーのメリットです。
本当なのか、検証していきたいと思います。
【防音性能が高い】
注目すべきは、製品の密度です。
今度はそれぞれの断熱材ごとの密度を比べてみます(こちらは数値が大きいほど密度が高い→性能が高いことを意味します)
◯ 高性能グラスウール 16K(普及タイプ) ◯ ロックウール 32K ◯ 現場発泡ウレタン吹き付け ー ◯ セルロースファイバー 50K以上〜
密度で比較すると、セルロースファイバーの優位性が際立ってきます。
この密度の差が、防音性能の高さとなって他の断熱材と比べて大きなメリットとして謳(うた)われております。
もし戸外が騒音の大きい環境(幹線道路が近いとか、線路が近いとか)、もしくは室内で大きな音を出すような環境であれば非常に有効な特性だと言えます。
しかしながら、音の出入りは壁よりも圧倒的に窓(サッシ)からの出入りの方が大きいので、家の防音性能を高めるならば、断熱材の種類云々よりもサッシの性能を上げる方が遥かに防音性能が高まります。
【防火性能が高い】
セルロースファイバーの原料は新聞紙の古紙が主原料のため、火には弱いイメージを持つと思いますが、ホウ酸を混入しているため、防火性能は高いと言われています。
ところが、グラスウールやロックウールも防火性能は劣らず高いので、セルロースファイバーだけが際立って防火性能が高いわけではありません。
また、本来建物の防火性能は外壁材や内装の下地材で確保するものなので、断熱材の素材そのものが大きなアドバンテージを持つものでもありません。
【壁体内の結露防止の効果がある】
セルロースファイバーは、一般的に普及しているグラスウールやロックウールの断熱施工と違い、材工で専門業者による責任施工となっています。
メーカーによって独自に、壁体の内部結露に対して10年、20年の保証を付けていますのでこれは大きな魅力です。
ただ、セルロースファイバーでないと壁体内に結露が起こるのかと言えばそうではありません。
壁体内の結露リスクはあらかじめ計算によって把握することができますので、それに応じた対策をすれば結露リスクを回避することは可能です。
しかし、それにはかなりの施工精度が要求されます。
基本、グラスウールやロックウールの断熱材は大工がそのまま施工するのですが、断熱材の施工が得意という大工は残念ながらあまり多くおりません。
大工の腕の問題だけなのかと言えば、そうとも言い切れないのですが…
安定した施工精度を考えると、セルロースファイバーや、現場発泡ウレタン吹き付けのような材工責任施工に分があります。
【白蟻やゴキブリなどの害虫予防効果がある】
セルロースファイバーにはホウ酸が含まれているので、たしかに害虫の予防効果は期待できます。
しかし、特に白蟻に対しては別でそれ相応の対策を講じますし、他の断熱材を使ったからといって、害虫に悩まされるといった事例があるわけでもないので、あくまでも保険的な意味合いが強いと思います。
【エコな商品である】
主原料が新聞紙で、紙の原料は木材ですから確かにエコロジーと言えます。
でもその事がセルロースファイバーを採用する大きな要因にはなりませんね!笑
以上、セルロースファイバーの付加価値について解説してきました。
多くのメリットを持つセルロースファイバーですが、セルロースファイバーでなければ実現できないという事はそれほど多いわけではないことを知っておいていただきたいと思います。
セルロースファイバーの最大のネックは・・・
そして、最大のネックは価格です。
グラスウールやロックウールの価格はかなりこなれてますが、セルロースファイバーは専門業者による責任施工なので、かなり高額となります。
現場発泡ウレタン吹き付けも専門業者による責任施工ですが、それと比べても倍か、それ以上高い金額が相場です。
そう考えると、果たしてセルロースファイバーが最強の断熱材と言えるのかどうか、冷静になって考えてみる必要がありますね。
セルロースファイバーの最大のメリットは!
さて、断熱性能以外の付加価値も魅力的ですが、肝心の断熱性能(特に体感値)は、先に挙げたようにどの断熱材も変わらないのでしょうか?
弊社は「グラスウール」、「ロックウール」、「現場発泡ウレタン吹き付け」、「セルロースファイバー」の断熱材を使った物件を数多く施工してきました。
断熱効果の体感値でいうと、実は大きな差があることを感じています。
圧倒的な違いを感じる体感値!
断熱材の施工は、工事全体の30〜40%くらい進行した段階で行われますが、断熱材施工後に現場環境が激変するのは、「現場発泡ウレタン吹き付け」と「セルロースファイバー」です。
夏であれば急に現場が涼しくなりますし、冬であれば窓からの日差しで室温が上がりその温度をキープしてくれるようになります。
何より、現場で毎日施工している大工たちが口を揃えて言いますね!
「全然違うよ〜」と。
製品の断熱性能(熱伝導率)はほぼ変わらないのに、なぜ「現場発泡ウレタン吹き付け」と「セルロースファイバー」はこんなに体感値が違うのでしょうか?
それは、グラスウールやロックウールの断熱材を使用した場合と比べて、圧倒的に気密性能が高まるからです。
「現場発泡ウレタン吹き付け」はその特性上、非常に密に断熱材を施工することができますし、「セルロースファイバー」も先に断熱施工面をシートで覆い、その中に吹き込んでいく施工内容なので、高い気密性能を担保できます。
断熱材というのは、断熱材の性能だけではなく気密性能が伴って初めて効果を発揮します。
そう考えると、現場発泡ウレタン吹き付けとセルロースファイバーの優位性はとても大きいと思います。
関連記事:【気密性能を求めて!】気密シートについて詳しく解説いたします
関連記事:【断熱材について!】
関連記事:【厚さを克服する家づくり!】
弊社の標準スペックは!?
弊社では、期待できる性能値と気密性能の高さ、価格とのバランスを考えて、「現場発泡ウレタン吹き付け」を標準スペックにしております。
防音性能が必要であればサッシの選定や内窓を計画しますし、耐火性能は外壁材や内装下地材で確保すべきと考えます。
壁体内結露対策は全棟計算によって「内部結露判定」を確認することで適切な対策を講じることができます。
白蟻対策も専用の防蟻処理の方がより確実です。
以上、「現場発泡ウレタン吹き付け」と「セルロースファイバー」との差額で十分対応可能ですので、弊社は「現場発泡ウレタン吹き付け」を標準スペックにしているのです。
もちろん、ご予算に余裕があるお客様にはセルロースフィバーもお勧めします。
まとめ
セルロースファイバーは断熱性能だけでなく、多くの付加価値を持った優れた断熱材ではありますが、他の断熱材に比べて最強といわれるほど大きなアドバンテージがあるとは思えません。
価格がもう少し安ければ、多くの方にお勧めできる断熱材になるかと思うのですが、今現在は採用に大きなネックとなっているのも事実です。
一方で、セルロースファイバーを安く提供している会社さんもおりますが、一点注意ポイントがあります。
セルロースファイバーの主原料は新聞紙なので簡単に入手できることと、製造は比較的ローテクで可能なため、自社で製造して使っている会社もあります。
そうした会社では、セルロースファイバーを安価に提供しているようですが、セルロースファイバーには日本工業規格=JIS認証品がありますので、ぜひJIS規格が取れているものなのかどうかの確認はした方が良いと思います。
セルロースファイバーもどきには気を付けましょう!
それではまた。
2020.04.08
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