セルロースファイバーは最強の断熱材なのか!?|アーキ・モーダ

2024.04.11

代表の鈴木です。
断熱材にこだわるお施主さまの中には、セルロースファイバーを指名される方が一定数おられます。
断熱材について調べれば調べるほど、セルロースファイバーの優位性を目にすることが多いからだと思います。
今日はセルロースファイバーの優位性についてあらためて確認していきたいと思います。

セルロースファイバーは最強の断熱材なのかを検証してみる

セルロースファイバーの画像

セルロースファイバーの断熱性能は高い!」と思っている方がとても多いように思いますが、実は他の断熱材と比べても極めて平均的な性能値、あるいはやや劣る性能値であることはあまり知られておりません。

それぞれの断熱材ごとの熱伝導率(熱の伝えやすさの値で、数字が小さい方が性能が優れている)で比べてみましょう。(単位は省略します)

セルロースファイバーの熱伝導率の説明画像
熱伝導率の比較

充填断熱で使用される代表的な断熱材として、「グラスウール」、「ロックウール」、「現場発砲ウレタン吹き付け」などがあり、「セルロースファイバー」と合わせ、この4種類でおそらく日本で建てられている住宅の90%は占めていると思いますので、この4種類で比較してみました。
商品の断熱性能だけで比較すると、セルロースファィバーの数値は他の断熱材と比べて特に良いわけではありません。
どの断熱材を選んでも断熱性能についてはあまり差がないというのが現状です。

セルロースファイバーの付加価値とは

では、セルロースファイバーが他の断熱材と比べてどんなメリットがあるかと言えば、それは断熱性能の違いというよりも他の付加価値によるところが大きいと思います。

セルロースファイバーの付加価値

  1. 防音性能が高い
  2. 防火性能が高い
  3. 壁体内の結露防止の効果がある
  4. 白蟻やゴキブリなどの害虫予防効果がある
  5. エコな商品である

以上がよく目にするセルロースファイバーのメリットです。

一つずつ検証していきたいと思います。

1.【防音性能が高い】セルロースファイバー

注目すべきは、製品の密度です。
今度はそれぞれの断熱材ごとの密度を比べてみます(こちらは数値が大きいほど密度が高い→性能が高いことを意味します)

セルロースファイバーの密度の説明画像
各断熱材の密度

密度とは、それぞれの断熱材1m3あたりの重さで表現されており、16Kとは16Kgあるということです。
その中でもセルロースファイバーは50Kg以上あるので、この密度の差が、防音性能の高さとなって他の断熱材と比べて大きなメリットとして謳(うた)われております。
密度で比較すると、セルロースファイバーの優位性が際立ってきますね。

もし戸外が騒音の大きい環境(幹線道路が近いとか、線路が近いとか)、もしくは室内で大きな音を出すような環境(音楽室やシアタールームなど)であればセルロースファイバーの選択は非常に有効だと言えます。
しかしながら、音の出入りは壁よりも圧倒的に窓(サッシ)からの出入りの方が大きいので、家の防音性能を高めるならば、断熱材の種類云々よりもサッシの性能を上げる方が遥かに防音性能が高まります。

2.【防火性能が高い】セルロースファイバー

セルロースファイバーの原料は新聞紙の古紙が主原料のため、火には弱いイメージを持つと思いますが、ホウ酸を混入しているため防火性能は高いと言われています。
ところが、グラスウールやロックウールも防火性能は劣らず高いので、セルロースファイバーだけが際立って防火性能が高いわけではありません。
また、本来建物の防火性能は外壁材や内装の下地材で確保するものなので、断熱材の素材そのものが大きなアドバンテージを持つものでもありません。

3.【壁体内の結露防止の効果がある】セルロースファイバー

セルロースファイバーは、一般的に普及しているグラスウールやロックウールの断熱施工と違い、材工で専門業者による責任施工となっています。
メーカーによって独自に、壁体の内部結露に対して10年、20年の保証を付けておりますのでこれは大きな魅力です。
ただ、セルロースファイバーであっても「壁体内結露計算」を行うと、NGとなるケースは多々ありますので、他の断熱材同様に別途気密施工を行う必要があります。

4.【白蟻やゴキブリなどの害虫予防効果がある】セルロースファイバー

セルロースファイバーにはホウ酸が含まれているので、たしかに害虫の予防効果は期待できます。
しかし特に白蟻に対しては別でそれ相応の対策を講じますし、他の断熱材を使ったからといって、害虫に悩まされるといった事例があるわけでもないので、あくまでも保険的な意味合いが強いと思います。

5.【エコな商品である】セルロースファイバー

主原料が新聞紙で、紙の原料は木材ですから確かにエコロジーと言えます。
でもその事がセルロースファイバーを採用する大きな要因にはなりませんね!笑

以上、セルロースファイバーの付加価値について解説してきました。
多くのメリットを持つセルロースファイバーですが、セルロースファイバーでなければ実現できないという事はそれほどあるわけではないことは知っておいていただきたいと思います。

セルロースファイバーの最大のネックは・・・

セルロースファイバー採用にあたり最大のネックは「価格」です。
グラスウールやロックウールの価格はかなりこなれてますが、セルロースファイバーは専門業者による責任施工なので、かなり高額となります。
現場発泡ウレタン吹き付けも専門業者による責任施工ですが、それと比べても倍近い価格が相場です。
そう考えると、果たしてセルロースファイバーが最強の断熱材と言えるのかどうか、冷静になって考えてみる必要がありますね。

セルロースファイバーの最大のメリットは!

さて、断熱性能以外の付加価値も魅力的ですが、肝心の断熱性能(特に体感値)は、先に挙げたようにどの断熱材も変わらないのでしょうか?
弊社は「グラスウール」、「ロックウール」、「現場発泡ウレタン吹き付け」、「セルロースファイバー」の断熱材を使った物件を数多く施工してきました。
そして断熱効果の体感値でいうと、実は大きな差があることを感じています。

圧倒的な違いを感じる体感値!

断熱材の施工は、工事全体の30〜40%くらい進行した段階で行われますが、断熱材施工後に現場環境が激変するのは、「現場発泡ウレタン吹き付け」と「セルロースファイバー」です。
夏であれば急に現場が涼しくなりますし、冬であれば窓からの日差しで室温が上がりその温度をキープしてくれるようになります。
何より、現場で毎日施工している大工たちが口を揃えて言いますね!
「全然違うよ〜」と。
製品の断熱性能(熱伝導率)はほぼ変わらないのに、なぜ「現場発泡ウレタン吹き付け」と「セルロースファイバー」はこんなに体感値が違うのでしょうか?
それは、グラスウールやロックウールの断熱材を使用した場合と比べて、圧倒的に気密性能が高まるからです。

「現場発泡ウレタン吹き付け」はその特性上、非常に密に断熱材を施工することができますし、「セルロースファイバー」も先に断熱施工面をシートで覆い、その中に吹き込んでいく施工内容なので、高い気密性能を担保できます。
通常のグラスウールやロックウールでも気密シート施工を行えば同様の環境となりますが、現場環境が一変するインパクトにおいては「現場発泡ウレタン吹き付け」や「セルロースファイバー」に分があると言えるでしょう。

関連記事:【気密施工の重要性と気密シートについて詳しく解説】

関連記事:【断熱材について!】

関連記事:【厚さを克服する家づくり!】

弊社の標準スペックは!?

弊社では期待できる性能値と気密性能の高さ、価格とのバランスを考えて、「現場発泡ウレタン吹き付け」と「高性能グラスウール20K」の併用を標準スペックにしております。
防音性能が必要であればサッシの選定や内窓を計画しますし、耐火性能は外壁材や内装下地材で確保すべきと考えます。(認定の問題で、現場発泡ウレタン吹き付けやセルロースファイバーは使い勝手がやや劣るケースがございます。)
壁体内結露対策は全棟計算によって「内部結露判定」を確認することで適切な対策を講じることができます。
白蟻対策も専用の防蟻処理の方がより確実です。
昨今、趣味で音楽室やシアタールームを計画される方も増えてきましたので、窓計画も十分に考慮した上でセルロースファイバーの選択は良いかと思います。

まとめ

セルロースファイバーは断熱性能だけでなく、多くの付加価値を持った優れた断熱材ではありますが、他の断熱材に比べて最強といわれるほど大きなアドバンテージがあるとは言えません。
価格がもう少し安ければ、多くの方にお勧めできる断熱材になるかと思うのですが、今現在は価格面が採用の大きなネックとなっているのも事実です。
一方で、セルロースファイバーを安く提供している会社さんもおりますが、一点注意ポイントがあります。
セルロースファイバーの主原料は新聞紙なので簡単に入手できることと、製造は比較的ローテクで可能なため、自社で製造して使っている会社があります。
そうした会社では、セルロースファイバーを安価に提供しているようですが、セルロースファイバーには日本工業規格=JIS認証品がありますので、ぜひJIS規格が取れているものなのかどうかの確認はした方が良いと思います。
セルロースファイバーもどきには気を付けましょう!

それではまた。

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